内藤銀器流、ペーパーナイフの作り方
皆様はペーパーナイフを普段からお使いですか?あまり切れないのでカッターナイフやハサミで開けているという方も多いのではないでしょうか?
しかし机の上やペン立てにさりげなくペーパーナイフがあると、とてもカッコいいですよね!
内藤銀器製作所では、そんなステータスでもあるカッコいいペーパーナイフを、そしてちゃんと使い勝手を良くするための切れ味を出すため、金鎚で叩いてしめた(硬くした)銀を使って作ることにこだわっています。
そんなこだわりのペーパーナイフの作り方をご紹介。
まずは材料作りです。
「材料の材料」である銀の板を用意します。
厚さ3.0mm~4.0mm。純銀では柔らかすぎるのでシルバー品位925を用います。
叩いて伸ばしていくので長さは完成系の半分か3分の2くらいです。
次に焼きなまします。(なますと柔らかくなります)
綺麗なサーモンピンク。
なましたら金槌のカラカミ(細い方)で叩いて伸ばしていきます。
叩くとどんどんしまります(硬化します)。
硬くなったらまたなまし、なましたらまた叩きます。この作業を3~4回繰り返します。
ある程度の長さまで伸ばしたら、金槌の平らな方で、
カラカミで叩いた際の凸凹を平らにならしていきます。
これで必要な長さと硬さの板「材料」の完成です。
こんな面倒な作業をせずとも、最初から必要な長さの板を用意すれば良いのですが、叩くことによって硬くなり、ペーパーナイフとしての強度と切れ味を出すことができます。今までの工程が弊社のこだわりポイントです。
出来上がった板を糸ノコで透かします。(※糸鋸で切ることを「透かし」と呼んでいます詳細はこちら)
ペーパーナイフの輪郭ができあがったので、やすりで先の方が細くなるように摺ります。(※やすりで削ることを「摺り(すり)」と呼んでいます。詳細はこちら)
刃の部分は気を付けながら薄くしていきます。
持ち手から刃先まで一直線にするのがポイントです。
持ち手を作るため、持ち手部分に別の板をハンダ付けします。
最後にきしゃげで削り、砥石をかけ、炭でとぎ、研磨したら完成です!
(※研ぎについてはこちら
研磨についてはこちら)
左・砥いだ後(研磨の前)、右・砥ぐ前
完成品
ところで、何故わざわざペーパーナイフのが存在するかご存じですか?
ハサミやカッターでも開封は可能ですが、わざわざペーパーナイフを使うのには理由があります。
それは、ペーパーナイフは紙を裁断する事に特化しているので、より紙を真っ直ぐ綺麗に切る事が出来るのです。
ペーパーナイフのいちばんのポイントと言われている点は切れすぎない刃です。
ハサミやカッターなどの鋭利な刃物は紙の繊維に関係なく紙をカットしてしまいます。
ペーパーナイフの場合、あえて切れすぎないように紙の繊維に合わせてカットが可能なので、折り目があれば手軽かつ綺麗に折り目通りに封筒を開封することが出来ます。
程よい切れ味のおかげで中身を誤って切ってしまう事も防げるのです。
さらにさらに。
15世紀頃にヨーロッパで活版印刷術が発明され、さまざまな印刷物が販売されるようになりましたが、当時の新聞や本などの書物は裁断されずに販売されており購入者が自分でカットしていたそうです。袋閉じの状態のものをペーパーナイフでカットして開かないと読めなかったのです。
現在のような断裁技術がなく、綺麗に切り揃っていなかったので、当時の人はカットしながら本を読み進めていたんでしょうか?それとも先に全部カットしてから読んでいたんでしょうか?
どちらにしても昔の紙は質も悪そうですしペーパーナイフの切れ味も今程ではないでしょう。カットするときに失敗していびつなカットの仕方になってしまったら悲しくなりそうですね。
ちなみに、断裁がされずに仕上げられた本のことをアンカット本、フランス装というそうです。
ところで、海外には綺麗な装飾のペーパーナイフがたくさんあります。もし海外旅行でお土産として購入されたら手荷物にはせず必ず預けてくださいね。カッターナイフのような切れ味はなくても没収されてしまいますよ。お気をつけください。
ちなみにペーパーナイフと同じようにレターオープナーという言葉がありますが、実はレターオープナーは機械なんです。
興味のある方は調べてみてください。
もしペーパーナイフで綺麗にカットできない方は折り目を綺麗につけてからカットしてみてください。
綺麗にカットすることができますよ。封書の開封にはやはりペーパーナイフがおすすめです。
切れ味や使用感は他にないものだと思います。
使用したことがない方にはぜひこの感覚を感じてただきたいと思います。
ペーパーナイフ「ねじり」こちらにて販売中