仕上げの種類
前回は研ぎについてご説明しましたが、
今回はその次の工程「仕上げ」についてご紹介します。
仕上げとは名前の通り品物の最終的な見た目を決める作業であり、
どういった仕上げにするかによって品物のイメージはガラッと
変わってきます。どういった仕上げ方があるのでしょうか?
1.鏡面仕上げ(バフ仕上げ)
こちらのお猪口は鏡面仕上げ、白上がりとも呼ばれます。
鏡面は主にバフ研磨で仕上げます。バフは羽布と書き、
回転させ品物を磨きます。
バフ研磨をする前の下準備として、砥石で研ぎ、炭研ぎをします。
その後、荒バフという布に研磨材を付けて磨き、最後に仕上げバフ
という布で磨きます。
荒バフは生地が上部で仕上げバフより硬く、
仕上げバフは柔らかく、目が細かいという感じです。
バフや研磨剤には様々な種類があります。
銀を磨くには?真鍮を磨くには?どのバフや研磨剤が適しているのか
常に研究します。他にもバフの直径や回転数なども品物の出来栄えが
左右されます。
2.梨地仕上げ(アラシ・ぼかし)
![梨地仕上げ・アラシ・ぼかし](/lib/img/blog/shiage_007.webp)
梨地仕上げとは、素材の表面に
鉄・砂(特に金剛砂(こんごうしゃ))・ガラスなどの細かい粒子を
吹き付ける事によって表面を粗す方法です。
サンドブラストと呼ばれることもありますが、厳密には多少の
違いがあるそうです。
その名の通り、果物の梨の表皮に似てザラっとした感じになります。
![香炉「竹」](/lib/img/products/kouro-take01.webp)
この香炉は、一度鏡面に仕上げ、彫刻し、彫刻部分をマスキングした上で
全体を粗しています。
マット仕上げや艶消し仕上げなど呼び名は様々ですが、
一般的に無方向性の艶消し面に仕上げる方法をマット仕上げ、
一定の方向性のある艶消し仕上げの事をヘアライン、サテナなど
と呼ばれています。
鏡面仕上げと比べ、落ち着いた雰囲気になり、
キズが目立ちにくいといった利点もあります。
ただ、その上から研磨をしてしまうと折角の梨地が
潰れてなくなってしまいます。
素手で触るとその部分だけ変色してしまうことがあり、
変色を取り除く際には研磨剤の入っていないクリーナーや、
研磨力の弱いものを使うなど、注意が必要です。
また、梨地仕上げをするには先に鏡面仕上げをする必要があります。
![仕上過程](/lib/img/blog/shiage_008.webp)
3.イブシ仕上げ
![銀イブシ仕上げ](/lib/img/showcase/products/thumbnail/ordermade/ordermade_greenmark.jpg)
イブシ仕上げとは、薬液でわざと黒くくすませる加工法です。
中世では、銀食器は毒に反応して黒くなると言われ好んで
使用されてきましたが、原理は同じです。
銀が黒くなるのはサビ(酸化)ではなく硫化と呼ばれています。
その性質を利用した仕上げ方法です。銀イブシとも呼ばれます。
4.古美(ふるび)仕上げ
![総古美仕上げ](/lib/img/blog/shiage_003.webp)
イブシに仕上げに似ていますが、一度全体を黒くし、その後研磨剤や
重曹などを使い、丁寧に黒い部分を少しずつ落としてゆきます。
この工程を「剥く」と呼んでいます。
全体的に落ち着いたアンティークな雰囲気が出ます。
黒くする過程や剥く過程それぞれでムラ(濃淡の差やシミ)がでやすく、
綺麗な総古美にするためには技術や経験が必要です。
5.メッキ仕上げ
![ロジウムメッキ](/lib/img/products/bs_3pillar_trophy01.webp)
こちらは真鍮製のトロフィーです。真鍮は本来黄色、磨けば金色を
しておりますが、ロジウムメッキを施してあります。
先の古美仕上げのぐい吞みの内側には金メッキが施してあります。
よく勘違いされやすいのは、メッキは表面の傷などを覆い隠して
くれるというイメージですが、
実際は表面の傷や凹凸の通りにメッキが乗ります。
綺麗にメッキをかけるには事前に表面を綺麗に研磨する必要があります。
![よくあるメッキの間違ったイメージ](/lib/img/blog/shiage_013.webp)
メッキ製品に彫刻を施す場合、深く掘ると下の地金が
出てきてしまうので、手彫りなどの深い彫刻は、メッキの前に堀り、
機械彫刻などの浅い彫刻はメッキ後に施したりします。
また、一般にメッキ製品は安価に上げることができますが、
メンテナンス性に欠け、修理などは非常に大変です。
無垢の銀製品ならば磨きなおして終わりのところ、
メッキ製品は一度メッキを剥離しなければならず、
剥離すると金属表面が荒れてしまうのでまた磨き直した上で、
メッキなおしとなります。
また、メッキは業者さんによって色が微妙に違うので、
同じ風合いに直すことはほぼ不可能なのです。
弊社では長く使うものに関しては銀製品をおススメしております。
6.仕上げ前加工
厳密には仕上げではありませんが、製品の仕上げ方をいくつか。
![仕上げかたのバリエーション](/lib/img/blog/shiage_012.webp)
〇槌目と岩石
![鎚目用金鎚と岩石用金鎚](/lib/img/blog/shiage_009.webp)
槌目と岩石の違いは金槌の違いです。
打つ面がツルツルの金槌で打てば槌目、ザラザラのもので打てば
岩石となります。岩石はプレスやへら絞りなどの加工で
施すこともあります。
昔の職人さんはコンクリートに金槌を打ち付けてわざと荒れた金槌に
していたという話を聞いたことがあります。
![仕上げ](/lib/img/blog/shiage_004.webp)
槌目のブランデーグラス。槌目を打ってから鏡面に磨くことで
宝石のように輝いて見えます。
〇ゴザ目
![ゴザ目](/lib/img/blog/shiage_001.webp)
そのまま、ゴザような模様を鏨(たがね)で打ち表現します。
ちなみにこの湯沸かしの仕上げ方法は梨地総古美仕上げです。
〇霰(あられ)
![霰](/lib/img/blog/shiage_010.webp)
霰打ちとも呼びます。南部鉄器などでお馴染みですね。
表面を凸凹にすることで、表面積を増やし、
お湯を早く沸かしたり、保温性を高めるといった効果があると
言われております。
以上、仕上げ方法についてのご紹介でした。