酸洗い
「酸洗い(さんあらい)」とは、あまり一般的な言葉ではないかもしれません、さらに業界ごと会社ごとで意味合いが違うかもしれませんが、弊社では品物を希硫酸に浸けて洗浄することを指します。酸上げ(さんあげ)と呼ばれることもあります。
希硫酸は水で薄めた硫酸のことです。素手で触ってもマンガなどのようにジュ~~ッとはなりません。しかし、手にキズがあったりするとしみますし、布などに含ませると数日でボロボロになります。皮膚についたらすぐ水で洗い流しましょう。
弊社ではプラスチックの容器に用意して使っております。
どんなときに使うかと言いますと、主に焼きなまし、ハンダ付け、ロウ付けなどの火を使ったときです。
一番わかりやすいのが銅のなましです。
銅は火に当てると参加して真っ黒になります。銀や真鍮も火による加熱で酸化被膜が生じますが、銅は顕著に現れます。この酸化被膜を落とすのに酸洗いをします。
画像のように一目瞭然、真っ黒だった銅が本来の色を取り戻しました。銀や真鍮でも製作の段取りによっては酸化被膜を落とすために酸洗いをすることがありますが、磨いて落としてしまうことが多いです。
ちなみに硫酸は無色透明ですが、銅を洗っていると青くなってしまいます。
次にハンダ付けです。
ハンダ付けでは、ハンダ付けの際にハンダの流れをよくするために塩酸を使います。塩酸といっても理科の授業で使った塩酸(HCl)ではなく、そう呼んでいる薬品です。
塩酸はそのまま排水溝に流す事は出来ないので硫酸とは別に水のたくさん入った桶を用意し、塩酸を使った品物を水、希硫酸の順番で潜らせて洗います。
水の桶で塩酸を薄め、希硫酸で洗い品物の汚れと塩酸を完全に取り除き、最後に流水で洗います。これがハンダ付けのときの酸洗いです。
水の桶は定期的に廃液業者さんに処理して頂きます。
ロウ付けの場合も似ています。ロウ付けって何?と思った方はこちらでご紹介していますので併せてお読み頂けると嬉しいです。
※写真はイメージです。
ロウ付けでは、加熱によって発生する金属表面の酸化被膜を除去し、さらにロウを流しやするするために、フラックスや硼砂(ホウシャ)を使います。フラックスや硼砂は火をあてると結晶化し、品物にこびりついて残ってしまい、簡単には落ちません。そこでロウ付け後に品物を希硫酸に浸けておく事で固まったフラックスを溶かして除去することができます。
ただ、漬け込み過ぎると金属表面を荒らしてしまうので、浸ける時間には気をつけなければなりません。
銀製品を金曜日に浸けたまま忘れて帰り、土日を挟んで月曜日に蓋を開けてびっくり、怒られたことがありますので、皆様も酸洗いの際はご注意ください。