カップ・トロフィーの手
銀カップやトロフィーには取っ手がついているデザインのものが
よく見られます。シンプルなデザインから、大会のモチーフなどを
表現したものまであり、カップの表情を決める重要な要素でもあります。
この取っ手のことを、弊社では(業界では?)『手』と呼んでいます。
耳と呼ぶこともあります。
手はその作り方によって種類を分けております。
中が中空のガラ手、中空ではない、無垢材で作ったムク手。
そして角のある角手(かくて)と、角を取った丸手です。
一番オーソドックスなのはムクの角で、板を糸ノコで切り抜いて
ヤスリがけして作ります。
イトノコの切断面をヤスリときしゃげで削って滑らかにします。
ムクの角手はレプリカカップなど、比較的小さめのカップに
よく用います。製作も一番容易で、早く安価に作ることができます。
一方、優勝カップや大会の本杯など、大きなカップでは手も厚くしないと
貧弱に見えてしまいますが、ムク手を使うと重くなってしまいます。
物理的なバランスも悪く危険ですし、材料代が余計にかさんでしまうので
中が中空のガラ手を用います。
ガラの角手の作り方は0.7~1.0㎜程度厚さの板をロー付けで
組み合わせて作ります。
厚さ10mm以上のムクの板をイトノコで切り回すのは大変で、
重量も重くなってしまいます。
ガラなら加工しにくい厚い手も制作可能となります。
丸手もあります。こちらもロー付けで作られていますが、
角手と違い一枚の板を丸めてパイプ状にし、
その後に徐々に曲げて手の形にしていきます。
角手よりも製作難度は高く、加工の技術が求められます。
加工しやすさにより、
角手は970、丸手は更(純銀)を使うことが多いです。
また、ムクの丸手もあり、角手をヤスリで角を落とし丸くしたものや、
鋳造で作られる物があります。複雑な模様が付けられた丸手は
鋳造で作られる事が多いです。
手は本体にハンダ付けします。ハンダ付けは強度が弱いですが、
強いロウ付けで溶接してしまうと、
その熱で本体がなまって柔らかくなってしまうため、
ハンダ付けで手を付けます。
ですので、手を持つと本体の重量に耐えら切れず
取れてしまうことがあります。
さらに、手を掴んで、力を加えてしまうと、カップ本体の内側、
手の付け根付近に、
「あたり」と呼ばれる凹凸ができてしまうことがあります。
あたりを修理するには一度手をはずし
金鎚で叩いて均さなくてはならず、手間がかかってしまいます。
ですので、トロフィーの手は持たないようにしましょう。
弊社では入社早々まず注意されることの一つです。
ついつい持ちたくなってしまいますが、あくまでデザインの一環であり、
取っ手ではないということ、以後お見知りおきをお願い致します。