カップ・トロフィーの手

銀カップやトロフィーには取っ手がついているデザインのものが
よく見られます。シンプルなデザインから、大会のモチーフなどを
表現したものまであり、カップの表情を決める重要な要素でもあります。
銀カップN0.55M
この取っ手のことを、弊社では(業界では?)『手』と呼んでいます。
耳と呼ぶこともあります。
手はその作り方によって種類を分けております。
中が中空のガラ手、中空ではない、無垢材で作ったムク手。
そして角のある角手(かくて)と、角を取った丸手です。
手の一覧表
一番オーソドックスなのはムクの角で、板を糸ノコで切り抜いて
ヤスリがけして作ります。
板から切り出したところ


糸鋸の切断面
ヤスリで削ったところ

イトノコの切断面をヤスリときしゃげで削って滑らかにします。

きしゃげで仕上げ、研磨したところ
手の出来上がり

ムクの角手はレプリカカップなど、比較的小さめのカップに
よく用います。製作も一番容易で、早く安価に作ることができます。
一方、優勝カップや大会の本杯など、大きなカップでは手も厚くしないと
貧弱に見えてしまいますが、ムク手を使うと重くなってしまいます。
物理的なバランスも悪く危険ですし、材料代が余計にかさんでしまうので
中が中空のガラ手を用います。
ムク手とガラ手の比較
ガラの角手の作り方は0.7~1.0㎜程度厚さの板をロー付けで
組み合わせて作ります。
厚さ10mm以上のムクの板をイトノコで切り回すのは大変で、
重量も重くなってしまいます。
ガラなら加工しにくい厚い手も制作可能となります。

丸手もあります。こちらもロー付けで作られていますが、
角手と違い一枚の板を丸めてパイプ状にし、
その後に徐々に曲げて手の形にしていきます。
角手よりも製作難度は高く、加工の技術が求められます。
ガラの丸手

丸手のなまし
丸手曲げ工程1


丸手曲げ工程2
丸手曲げ工程3


加工しやすさにより、
角手は970、丸手は更(純銀)を使うことが多いです。

また、ムクの丸手もあり、角手をヤスリで角を落とし丸くしたものや、
鋳造で作られる物があります。複雑な模様が付けられた丸手は
鋳造で作られる事が多いです。

手のハンダ付け
手は本体にハンダ付けします。ハンダ付けは強度が弱いですが、
強いロウ付けで溶接してしまうと、
その熱で本体がなまって柔らかくなってしまうため、
ハンダ付けで手を付けます。
ですので、手を持つと本体の重量に耐えら切れず
取れてしまうことがあります。

さらに、手を掴んで、力を加えてしまうと、カップ本体の内側、
手の付け根付近に、
「あたり」と呼ばれる凹凸ができてしまうことがあります。
あたりを修理するには一度手をはずし
金鎚で叩いて均さなくてはならず、手間がかかってしまいます。

ですので、トロフィーの手は持たないようにしましょう。
弊社では入社早々まず注意されることの一つです。

ついつい持ちたくなってしまいますが、あくまでデザインの一環であり、
取っ手ではないということ、以後お見知りおきをお願い致します。
手のハート