当て金(あてがね)は習字の「永」
あてがねとは、漢字で当て金と書き、
鍛金の絞り作業・模様打ち、修理などに必要な鉄の塊の事をいいます。
当て金の形には決まりがなく、大きいものから小さいもの、
頭の形も平らなものから丸みのあるものまで様々です。
底打ち(そこうち)、鳥口(とりくち)などと呼ばれることもあります。
鳥口は新潟県の方の呼び方かもしれません。
鍛金とは金属の丸い平らな板を、金槌で叩いて好きな形に
整形してゆく技法です。
鍛金ではまず作りたい形を図面に起こし、その図面に合わせて
どの当て金を使うかを決めるところから作業が始まります。
当て金のアール(曲線・曲面)に沿って板を叩いて行くので
一つの当て金ではそのアールに合った部分しか叩く事ができません。
よく勘違いされていることは、当て金と金鎚を使って好きな形に板を自在に変形させていくと思われがちですが、
実際は当て金の形にしか板を変形させることができません。
ですので、一つの品物を作るためには何個も違うアールの
当て金が必要になります。
作りたい品物に合わせて一から当て金を作ったりもするので、
作品を作る職人レベルになると何十本も所有している事も珍しくありません。
また、市販の当て金は種類が少なく形も決まった物しかありません。
そのため、鍛金で使う当て金は、殆どが自分でヤスリで削り
自分専用にカスタマイズします。
作りたい品物を作るためには、品物に合うように鉄を摺り出すところから、
職人は道具作りから始まると言われています。
また、当て金を刺して使う木台にも相当な強い力が加わりますし、
当て金の固定も意外と重要な要素であり、木台のカスタマイズも
必要になります。
鍛金以外にも、
刻印やポンチを打つときに平らな当て金(金床・金敷)を使います。
また、槌目模様を打つときにも使います。
槌目模様を打ったぐい吞み。
また、弊社で多い当て金の使い方は、凹みの修理や、湯沸かしや
急須の製作です。
打ち出したり凹ましたりするには、湯沸かしや急須の口(注ぎ口)
のような複雑な曲面を叩くと一番勉強になります。
漢字で言うと「永」の字のように、「とめ」、「はね」、「払い」
などの基本がすべて詰まっているように、
湯沸かしの口には「曲げ」、「ふくらまし」、「凹まし」という技術が盛りこめられていて、当て金の使い方の上達への道として
おススメしたいと思います。
鍛金・当て金についてこちらのサイト様も興味深いので参考にしてください。