松脂の使い方

皆さんは松脂と聞いて何を思い浮かべますか?
野球や体操選手がボールや鉄棒などを掴むときに使う粉でしょうか?
あるいはヴァイオリンなどの弓に付けたりしますね。
松脂の入った鍋
そもそも松脂は松の樹液を固めたものですが、
調べてみると実に様々な業界で使われております。
銀器業界でも使われており、昔から「万能当て金」と呼ばれ
重宝されてきました。
松脂を注いでいるところ
松脂を詰めた銀のお皿
どのように使うかと言いますと、
彫金では品物に文様を彫る際に品物を固定したり
そのまま当て金として使用します。
松脂を詰めた湯沸かし
鍛金では中が空洞の品物に菊割り(模様の一種)を入れたりする
際に使われます。
タガネを入れているところ
タガネで菊割したところ

松脂は細かく砕いて鍋で弱火で熱すると、
トロトロの液体状になるので自由に形を変えられます。
又、用途によって粘度を調節する必要があり、
「松脂」、「地の粉(じのこ)」、「油」を使い固さを変えて使用します。
油を足すことで松脂は柔らかくなります。
少しづつ足して粘度を調節するのですが、
柔らかくなりすぎてしまった場合は地の粉を足して固さを調節します。
地の粉1
地の粉2
目的に応じても硬さを調整しますが、夏場と冬場でも硬さを調整します。
夏の暑い気温では常温でも指で強く押すと変形してしまうほど
柔らかくなってしまうことがありますので硬めに、
冬は当て金として硬くなり過ぎないように柔らかくしたりします。

使用する際は松脂を詰めた反対側からタガネなどで叩くのですが、
その松脂の柔らかさが当て金として素晴らしく、叩かれた地金と
一緒に松脂も変形するので地金の逃げ場をちょうど良い具合に
作ってくれます。
このちょうど良い硬さの素材はそうそう簡単には見つからないでしょう。
万能当て金を呼ばれたり、他の業界でも使用され続けているのは
そういうことだと思います。

そんな優れた松脂ですが、気を付けなければいけないののは、
加熱してトロトロ(ドロドロ)になった松脂は粘性が強く、
非常にベトベトしています。
まるで溶けたチーズやチョコレートのようで、
服や肌についてしまうと中々取れませんし、
特に肌に付いてしまった場合はすぐに取り除くことができず、
軽い火傷ではすまないので、皮手袋を使うなど、
取り扱いには十分注意が必要です。