職人冥利!オーダーメイド案件

オーダーメイドの大きな特徴は『世界に一つしかないもの』という点です。

大量生産の既製品よりどうしても割高になってしまいますが、
自分好みにカスタマイズできたり、贈り物としても大変喜んで頂けたり、
愛着はひとしおのものと思います。

と同時に作り手の我々としてはオーダーメイドは未知との遭遇であり、一度も作ったことのないものへの挑戦であり、職人魂に火がつくものであります。

今回は主に作り手から見えるオーダーメイドの世界をご紹介します。

例えばこちらは弊社で製作させて頂いたオーダーメイド製品です。


銀製オーダーメイドカズー
銀製オーダーメイド指揮棒


銀製オーダーメイドホールインワンスコアボード
銀製オーダーメイドお墓・ミニ骨壺

カズーという楽器・銀製の指揮棒・ゴルフのスコアボード・お墓型ミニ骨壺です。
どの製品も見慣れないものばかりだと思います。
その他にもオーダーメイド製品はこちらに掲載しております。

オーダーメイド案件の最初のステップはお客様のお話をしっかりお聞きすることです。
最初のヒアリングが最も重要と考えております。

我々は何かを作るとき図面(設計図)が必要です。
部品の寸法や角度、位置関係などが数値化されていないといけません。
一方、お客様が持っているのは「こういうものを作りたい」というイメージの場合がほとんどであり、
mm単位で寸法を指定してくる方は工業製品以外ではほとんどおりません。
そのイメージをお話し頂き、具体的な形を想像しながら、すり合わせて図面に落とし込んでゆきます。

もう一つお聞きしなくてはならないことが「5W2H」です。目的や予算も重要なファクターとなります。
5W2H・When(いつ)・Where(どこで)・Who(誰が)・What(何を)・Why(どうして)・How(どうやって)・Howmutch(予算はいくらで)
銀製指揮棒の場合は還暦を迎える恩師に生徒一同が贈った記念品ですので、
(いつ):記念演奏会で
(誰が):生徒一同が
(何を):銀製指揮棒を
(なぜ):恩師の退職記念に
(誰に):恩師に
といった感じに、さらに納期や目的、予算などをヒアリングします。
予算や納期はどうしてもビジネスライクな話になってしまうのですが、目的は気持ちがほっこりするものなので、我々作る側も気持ちがこもります。

会社としてはどうしても予算を考えなくてはなりませんが、
職人としては、作り方を考えるのが楽しいところです。

特に銀製カズーに関しては作り方をあれこれと考えたことが印象に残っています。
銀製オーダーメイドカズー
「カズー」というものを銀で作りたいというご相談を頂きました。
カズーという言葉は初耳で、そのものの調査から始めました。

カズーというのは楽器の一種だということがわかり、
実際に楽器屋さんで見てみたり、玩具のカズーは安価だったので買ってみたりしました。
カズーはビニール部分が振動し音が鳴ることがわかりました。
さらにそのビニールを取り換えて使うことができるものと、ビニールが破れたら終わりの使い捨てのカズーがあることもわかりました。

今回は銀で作りたいということなので、交換式になりました。

ここで問題が発生しました。
交換式のカズーは、ビニールをしっかり固定するため、ラッパのような部分にネジが切ってあるのです。

ネジを切ることは実は非常に手間がかかります。
大量生産ならともかく、一個のために専用の設備を用意するわけにはいきません。予算もあります。
そういう壁にぶつかったとき、お話をお断りしてしまう会社様というのは実は多いです。弊社も100%受けきれるわけではありません。

ただ、簡単には諦めません。職人魂に火がつき、考えます。
問題はネジですが、目的はネジではありません。要はビニールを固定できればいいわけです。
ネジを切らずにビニールを固定できるかを考えました。

皆で相談しアイデアを出し合いました。
そしてそのアイデアが技術的に可能か検討し、予算内で作ることができるか考え、図面に起こし、お客様とご相談します。
銀製カズー簡易図面

図面ができたらいよいよ実作業です。
今回は楽器ということで、ある程度の強度を要しかつ曲げ加工しやすいものということで純銀ではなくシルバー970を用いることにしました。
中が空洞なので型(「や」と呼んだりします)が必要になります。
地金の厚みを考えながら、曲げ加工用の型を真鍮でつくりました。
カズーの型・やを拵えます
型に銀の板を一枚巻き、
「や」に板を巻き付け本体を作ります
つなぎ目をロウ付けをしました。ロウごし(ロウが回りきらなかった部分)などができないようにロウ付けします。

上に取り付けるパーツは絞り職人さんに作って頂き、穴をあけ組み合わせてゆきます。

上につけるパーツ
パーツを本体

ビニールを止める細工をして磨いて完成!

半回転するとしまる仕掛け1
半回転するとしまる仕掛け2


口を付けるものなのでバフ粉(研磨剤)をしっかり取り除いたり、思いつく限りの気を配り製作させて頂きました。
普段何度も作っているものでは気を付ける点がわかっていますが、オーダーメイド製品の場合は予想外のことが起こりかねませんので、問題が起きないように慎重に作業を進めます。
オーダーメイド製品はお客様にとって、出来上がるまで時間がかかるのが弱点ですが、同時に出来上がるまでの時間はワクワクの時間でもあって欲しいと思っております。
待ち時間を楽しんで頂けるよう弊社は作業の進捗度合いを写真でお見せするようにしております。

最初のヒアリングが甘いとお客様のイメージと離れたものが出来てしまい、
こんなはずじゃなかった!となり、今までの苦労が水の泡になってしまいます。
ここで喜んで頂くことが最大の喜びポイントです。
お客様のイメージを具現化する、これが職人から見たオーダーメイド製作の醍醐味であります。

作りたいものを見極め、予算内で最大のクオリティを出せるように作り方を選択し、実際に形にしてゆきます。
段々形になってゆく過程は我々も見ていてとても楽しいです。

無理難題ほど燃える傾向にあります(笑)
何か作ってみたいものがございましたら、お気軽にご相談頂ければと思います。