楽することの恐ろしさ
ようやく暑い夏も一息つきましたね。そうなると我々記念品業界は、一年のなかで、最も活気のある季節の到来です。
しかし、それが悪い影響を及ぼすことがあります。それは昨年製作させていただいた記念品、対応する時間がない、そんなお粗末な結末です。
前回は3ヶ月あった製作期間が40日、しかも最も仕事が集中し、3連休が毎月のようにある、この時期に、単純な記念品なら、問題ありませんが、かなり時間が掛かり、難易度の高い記念品、しかも1つではなく、数がそこそこある、そんな記念品、しかも半年以上前からお見積と製作するか否かの確認を再三にわたって、問い合わせていた案件です。
弊社は10年以上、休日出勤ならびに残業は0を貫いております。社員さんが間に合いそうもないから、残業しても良いか?と聞いてきても、しっかり段取り取った?まだなら私と現場全員で打合せするよ、確定している案件を1つ1つ並べ、外注にお願いする、例えば磨きやメッキ加工、彫刻加工や仕上げ加工、等々が重ならないよう、どのタイミングで下磨きに出したり、先に彫刻したり、個々の社員さんの一週間スケジュールの60%を埋めます。
何故60%かといえば、トラブル発生や新規が入ってくることが想定されるからです。この段取りで間に合わない場合は、残業や休日出勤をお願いします。
残業や休日出勤を、頑なに嫌うのは、8時間労働に慣れた職人が、仮に10時間になり、それがしばらく続くと、疲れてスピードが落ちる、また怪我に繋がる危険性が増すからです。
だから新規案件であれば、仮に特急仕事で、間に合わすのが難しい案件でも、残業をお願いしてでも、お引き受けしますが、リピート案件で、しかも何回も催促した案件にも拘わらず、大特急になった場合は、特急料を頂戴できるなら対応しますよと返事すると、おおむね、それなら記念品を他の物に変更、となります。最悪は純国産から外国産になることです。
でも、これは防げます。つまりは人災です。物を作る者から消費者までの間に入る者が、今後のことを顧みず、己ばかり見ているからです。
幾つか実例をあげれば、
・見積金額が上がることを伝えるのが辛いから、最後の最後まで、それを伝えない。そうなると予算組みが終了しており、単価が上げられない。そこで、同単価で出来ないかと、メーカーに協力を依頼し、断られると安価な外国産に逃げる→業界の売上を減少させる行為
・想定されている予算を聞かず、なるべく安価な外国産を提案、あまった予算でショーケースを製作したそうで、他の業界に予算が流れてしまう
・組織の担当者が、組織の将来を考えず、自分の価値を高めるため、あえて予算を上げさせない→今回の製作期間40日は恐らく、これが原因かと想定しております
このように己を優先し、会社や団体は二の次が横行していることが問題かと思います。
また消費者に値引き販売前提で定価をつける、これは消費者の為ではなく、間に入る2次3次問屋のためで、それらが付加価値のある方々なら、何も問題はありませんが、果たして如何なものでしょう?あるなら値引きなど、必要ないかと思います。
値引き分は、他の飲み会などの予算に行くこと、容易に考え付くはずなのに、首をかしげるしかないというのが、今の記念品業界だと思います。
まずは予算を聞く、そしてイベントに相応しい記念品を提案する、その為には営業する者が、仕入先や自社の専門部署に丸投げするのではなく、自分でヒヤリングし、考え、相談することだと思います。何でもかんでも、外国産に手を伸ばせば、間違いなく予算は削られ、業界のφが縮むことは、誰が考えても、わかりきったことです。でも人は楽をしたがる。
楽が常態化すれば、もういばらの道は歩けない=「個々の進歩は無いし、会社の業績は下り坂」は避けられませんね。