ロウ付けとハンダ付けの違い

ロウ付けという言葉を聞いたことがありますでしょうか?

弊社では銀カップなどの製造の際に、よくハンダ付けを用いますが、ロウ付けも必要に応じて行います。

ハンダ付けもロウ付けも、溶接の手法の一つですが、どのように違うのでしょうか。

ハンダ付けは中学校の授業などでやったかもしれませんが、電子工作でお馴染みの半田ごてを使って行うハンダ付けとほぼ同じです。

接着したい材料の間にバーナーで溶かしたハンダを流し込み接着します。
ハンダ付け前
接着後のハンダは材料と材料の間に、接着剤のように挟まった状態になります。
ハンダ付け後

ロウ付けは少し違います。

ロウ付けもハンダ付け同様、材料の間に溶かしたロウ材を流しますが、
ロウ付け前
このとき、母材とロウ材の間には合金(または化合物)が生成され、より強固な接着を実現します。
ロウ付け後
ハンダ付けは力のかかり具合などで場合によっては数年で取れてしまうこともありますが、ロウ付けはほぼ一生はずれません。

ハンダ付けとロウ付けにはもう一つ違いがあります。
温度です。
ロウ材の溶ける温度は、ハンダが溶ける温度よりずっとずっと高いのです。
ハンダの溶ける温度は約200℃前後ですが、
銀ロウの融点は約650℃前後~800℃前後まであります。
ロウ付けはハンダ付けよりも強度がありますが、ロウ付けの際の熱で母材をなましてしまうという弱点があります。
「なまし」については/link:article/?id=22:こちらで解説しております。

ですので、強度をとるか、母材の硬さを残すか、作る品物によってハンダ付けとロウ付けを使い分ける必要があります。
製作の段取りにも関係してきます。

ロウ材はその組成によって融点が調整されています。弊社で使う銀ロウにも2分ロウ、3分ロウ、5分ロウ、早ロウ(はやろう)など融点によって種類があります。数字の低い方が融点が高いです。
製作の段取りによってうまく使い分けをします。先に融点の高いロウ材で溶着することで、次のロウ付けでその部分が溶けてしまわないようにします。
溶着部が多いものは、ハンダ付けは最後の接着にしか使うことができません。

また、ロウ付けは合金(または化合物)の生成を行うので母材とロウの溶着が円滑に行われるために表面の油分や汚れを除去しなければならないのですが、ロウ付けの際の加熱によって母材の表面が酸化して汚れてしまうので、それを防ぐためのフラックスというものを用います。
フラックスはたくさん種類がありますが、ホウ酸や硼砂(ほうしゃ)などが主成分となっております。

ロウ付けは母材によってロウ材とフラックスを使い分けなければならず、溶着後はフラックスを洗い流すために希硫酸などで洗浄します。

ハンダ付けもハンダを流しやすくするための物質がありますが、水などで洗浄することができます。

まとめると、手間がかかるけど強いのがロウ付けで、お手軽だけど少し弱いのがハンダ付け、ということになりますでしょうか。

以上がハンダ付けとロウ付けの違いでした。
ハンダ付けとロウ付け、何となく伝わりましたでしょうか?