コラム 銀ちゃんの『銀が一番』
今年は冷夏と言われていましたが、思いのほか暑い日が続いておりますがお変わりありませんか?私は幾ら
か夏バテしており、お酒の量も少し抑えて、自分の体調と向き合って行こうと考えております。
今回は一番お問い合わせをいただく修理に関する件で、参考にしていただければと思いテーマに設定しました
。
まずは修理するにあたり確認しなければいけないのは素材です。一概に金属製品といいますが特徴が異なり
ます。弊社では溶接方法としてロウ付けからハンダ付けが一般で、細かくいえば銀と真鍮の混ぜ方の違いでロ
ウの種類も4種類(融点が異なる)ほど作っており、ハンダは鉛なので口に入ると有害だからスズでの溶接など
用途に合せて使用致します。
これらは比較的融点が高い金属で用いられる溶接法で、主に金・銀・銅・洋銀・真鍮などが弊社の扱える物で
す。
またお電話を頂戴するのですが、お写真や品物を拝見せずに修理ができるかどうかは一切断言致しません。
またその際修理代をお聞きになりますが、これもお答えしかねます。
何故なら修理で品物が壊れてしまうからです。日頃我々の言葉でお釈迦と申しますが、元々4月8日がお釈迦
様の誕生日で、鍛冶屋さんが品物をダメにした時火が強かったことから、‘ひがつよかった‘が‘しがつようか‘と
聞こえ品物が壊れてしまうことをお釈迦になるという話になったそうです。ヤスリ賭けではなかなかお釈迦には
なりませんが、溶接はあっという間に溶けてお釈迦になります。その為製作方法が不明な他社製品や外国の
品物は難しいのです。あとロウ付けの場合、ロウが溶けるまで火をあてますと、廻りの金属部はナマリ硬かった
物が柔らかくなります。また平らだった部分が歪み反ってきます。そんな特性があるという事をご理解いただけ
ればと思います。
あと外国製品でシルバープレートという名で販売しておる品物は、ほとんど銀製品ではなく、真鍮・洋銀・銅の
銀の厚メッキ仕上げだと思います。この時取手部や足が取れたというご相談がよく入りますが、まず取れた部
分が溶接部からか途中でもげた物かによって、修理できるか判断できます。前者なら可能性が高いですが、後
者なら弊社はお断りさせていただきます。それは通常融点の高い鋳造品ならこういう取れ方はあまり考えにくい
ですが、融点の低い鉛やスズが主成分の鋳造品は溶接箇所より力が加わる所からもげるように取れてしまう
事案が多く存在します。この時とれたパーツの双方の装着部の内側がナマリのような黒さなら融点の低い鋳造
品だと考えられ、ハンダやスズで溶接する弊社としましては、あぶっているうちに先に本体が溶けてしまう為お
断りさせていただいております。
弊社では長い間使っていただく為、銀製品等の修理をお引き受けしております。アフターケアができてこそ、製
品が流通できるのかと信じて対応してまいりました。ところがこれだけ多くの品物が生産されているのに、修理・
メンテナンスの引き受け先がほとんどいないそうで、有名な外国メーカーにいたっては、修理が難しく強度が弱
いスズ主体の鋳造を荷のかかる部分に付け、シルバープレートとうたい修理を依頼すると買ったほうがお安くな
るような返事が返ってくるそうです。ならせめて修理ができる素材で製作できないものかと物を作る立場の人間
として憤りを感じます。
でも物の価値は人それぞれ値段ではなく、使われる方の思いによるものだと修理を通して知りました。
私共では深く思い出に残る記念品をこれからも丁寧に1つ1つ製作してまいりますので、お気軽にお問い合わせ
いただけましたら幸いです。
まだまだ暑い日は続くと思いますが、どうぞお体ご自愛なさってお過ごしくださいませ。