ロウ付けの注意点

ロウ付けとう言葉は一般的ではないかもしれません。
図画工作の授業で基盤のハンダ付けをしたことはあるかもしれませんが、
基本は同じで、ハンダの代わりにロウを溶かして接合します。

身近な例では指輪に使われています。見た目ではわかりませんが、
指輪のどこかにロウ目(つなぎ目)があります。

ロウといっても蝋燭ではなく、母材と同じ素材の金属に
別の金属を混ぜたロウ材と言われるものを用います。
ロウ材(銀ロウ)
銀製品の場合は銀に銅と亜鉛を混ぜた銀ロウを使います。

ロウとハンダは素材も異なりますが、融点も違います。
一般に、ハンダは温度が450℃以下で液体になり、
ロウは450℃以上で液体になります。
より高い温度で溶けるロウは金属同士が固着後に強く接合さ
れ、
接合強度はハンダ付けのそれを上回ります。

ロウ材には色々な種類があります、
弊社で使っているものは
早ロウ(ハヤロウ)、2分ロウ、3分ロウ、5分ロウで、
他にも7分ロウ、8分ロウなど様々です。
基本的には数字が大きいほど融点が低いです。
何ヵ所もロウ付けをする場合は、先にロウ付けした箇所が後からロウ付けする際の熱で溶けてしまわないようにこれらのロウの
融点の違いを利用して順番にロウ付けしていきます。


また、ロウ付けにはフラックス(や場合によってはホウ砂)が必要です。
フラックスというのはロウ付けの「ぬれ」を効果的に促すための
促進剤です。 金属表面の酸化皮膜を除去して、
金属同士が接合しやすくなるのを補助します。
濡れとは、金属(必ずしも金属とは限らない)の表面に液体が薄く広がっている現象または状態をいいます。
フラックスを塗らないと、溶けたロウ材は表面張力によって球体になってしまいます。フラックスを塗ると、溶けたロウ材は薄く流れてゆきます。

ロウ付けをするにはまずロウをさしやすいように細かく切断します。
ロウ材(銀ロウ)
次に、母材同士の接合面にフラックスを塗り、
母材同士をくっつけた状態でバーナーで熱していきます。
熱していくと熱で一度固化したフラックスが再度溶けていきます。
そこにロウ材をさすとロウ材が母材の接合面を流れるように
溶けていきます。

ロウ付けはこれで完了ですが、使ったフラックスが母材に
くっついて残っています。フラックスはガラス質のように変質しており、
この後の仕上げなどの工程で邪魔になりますので、
希釈した硫酸に浸ける事によって除去します。

ロウ付けで気を付けなければならないことは、「ロウごし」と言い、
火やフラックスやロウのどれか(又は全部)が足りないときにできる
プツプツ穴があいたようなロウ目になってしまうことです。
もし穴があいてしまったら使ったロウよりも融点の低いロウを
使い穴を埋めましょう。
火・フラックス・ロウの加減が技というわけです。

ロウ目を綺麗に仕上げるには、通常の研磨ではロウ材と母材の
硬さの違いから凹んで見えてしまうことがあるので、
炭研ぎをし、ヘラを当ててあげると綺麗になります。

以上が内藤銀器流のロウ付けの仕方でした。